氏神様の総代とお寺の総代を兼ねることはおかしなことですか

神社にいる人たち

 神社の総代と寺院の総代とでは、その意味も異なってきます。このため、二つを兼ねること自体を矛盾と捉える考えもあるようですが、日本人特有の信仰や歴史的な側面を考えた場合、こうしたことが決して矛盾することではなく、また間違ったことではないことに気づくのです。
 仏教の日本への伝来は六世紀半ばといわれていますが、この時に伝わってきた仏教は、インド発祥の本来の性格とは異なり、中国・朝鮮など経由してきた地域の影響を色濃く受けたものでした。その後、我が国の神祇信仰や祖先祭祀の影響を受け、これを取り入れたために、仏教は日本の宗教の一つとして、広範に普及することができました。これは外来宗教にも寛容な日本人の気質によるとともに、大半の仏教宗派もこれをよく理解し、日本の社会や慣習に沿う形で布教をおこなってきたためであるといえます。
 我々日本人の普遍的な信仰として「敬神崇祖」(神を敬い、祖先を崇ぶ)という考えがあります。これに外れていない教えを説く仏教宗派であれば、神社に対する崇敬と何ら相反するものではなく、兼ねて御奉仕しても差し支えないのではないかと思います。

※総代(そうだい)
 氏子または崇敬者のうちの代表的な役で、徳望厚い人物が選ばれ、神社の運営や祭礼などで神職に協力したり、氏子・崇敬者の便宜を図るなどの職務をおこなう。

《「神道いろは 神社とまつりの基礎知識 神社新報社」より》